VOL.61 おしりぷりぷり待ち伏せ攻撃。頭脳戦の運動会。
ぷりぷり。ぷりりっ。ぷるっ。ぷるぷる。
たとえば、即席キャットランの片隅に置いた段ボール箱や柱のかげに身をひそめ、
姿勢を低くしておしりを左右に小さく動かす行為は、うめちゃん、ももちゃんが共に見せてくれるもの。
自分は物かげに隠れて、相手が目の前に来た瞬間飛びかかろうと、待ちかまえている姿だ。
狙う相手はもちろん、うめちゃんにとってはももちゃん、ももちゃんにとってはうめちゃんということになる。
ぷりぷり。ぷるるっ。
耳をツンとそばだて、じっと息を殺し、
片手を内側におりこんでもう片方の手でバランスをとりながら、時に上体を起こし、
また伏せて、飛びかかる瞬間をうかがう様子は、実に野性的。
私は、少し離れた場所で、そんなふたりを見ながら、一緒に息をひそめる。
そして、エモノを狙う側には「がんばれ!まだまだ、もう少し」、 狙われている側には「気をつけて。びっくりしちゃ駄目だよ。
そこで狙いをつけて待ってるからね」と、胸の中で繰り返す。
これを声に出してしまったら、ルール違反。
彼らは彼らのルールの中で、このゲームを楽しんでいるはず。
エモノが、自分が狙われていることを知らずにのんびりとこちらに歩いてくる。
狙う側はその瞬間を逃さない。見事なタイミングで「えいやっ」と飛びかかる。
さあ、大運動会、後半戦のはじまりだ。
おしりぷりぷり待ち伏せ攻撃が始まるのは、大抵、
即席キャットランや廊下や書類を積み上げた部屋を有効利用しての、
走りに走り回る大運道会が行われた後。
前半戦とも言える、走る運動会は、追いかけていたはずのうめちゃんがももちゃんに追いかけられ、
追いかけていたはずのももちゃんが、いつの間にかうめちゃんに追いかけられ…。
しまいには、どちらがオニさんだったのかがわからなくなる追いかけっこ。
時には、ももちゃんを追いかけていたうめちゃんが、ももちゃんの上を飛び越えて、
ももちゃんの前を走り出したり、すごいスピードで走ってきたももちゃんが、
止まりきれず、勢いあまってカッカッと爪の音をたてながらキャットタワーの上に登って行くという、スリル満点、それはそれは楽しい大運動会だ。
急に静かになったことに気付き、そっと様子を窺ってみると、
ふたりとも足を長く投げ出して、呼吸を整えている最中なんていうことがある。
この、少しの休憩をはさんだ後に行われるのが、おしりぷりぷり待ち伏せ攻撃。
何らかの理由で部屋を後にした相手が帰って来るのを待ち伏せして行われるおしりぷりぷり。
いわば、後半戦、頭脳戦への突入だ。だぶん、もっと遊ぼう!の合図でもあるのだろう。
相手に飛びかかって組み合った瞬間から、また新たな、
今度はかくれんぼ要素が大いに加わった追いかけっこがはじまる、というわけだ。
物かげに隠れて、手だけちょいちょいと出してみたり、
相手が探しているのがわかっているはずなのに、やっぱり、
じっと息をひそめて物かげに隠れていて、相手の後ろに突然飛び出したりと、
実にいろいろな技を駆使しての運動会後半戦。
こんなふうに、派手で、時々はらはらさせられる運動会を繰り広げていても、
うめちゃんは、ももちゃんを守ってあげなければならない存在だとわかっているし、
ももちゃんが、うめちゃんを年上のお兄さんだと理解して、頼りにしていることも十分に伝わってくる。
だからこそ、安心して見ていられる大運道会でもある。
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